「夢を追い続ける舞台」(後編)

まだまだ知らないことばかりだけれど、日本ワインをもっと知りたい!と意欲満々のワタシ、ヴァインツリー編集部員・りょーこが、ワイナリーを訪ねて感じたあれこれをお伝えします。こんなことを聞いたら怒られるかも…なんて、ちょっとおっかなびっくりのレポートですが、同じように日本ワインをもっと知りたい! というみなさん、どうぞご一緒に。


episode 6_2
カタシモワイナリーの「夢を追い続ける舞台」(後編)

カタシモワイナリーの醸造所に潜入

初・関西ワイナリー訪問は、カタシモワイナリーさんへ。畑の見学に続いて醸造所へやってきました。

前編はこちら!>>


カタシモワイナリーさんはステンタンクを設置型とせず、フォークリフトで運ぶことのできる仕様にしていました。こうすることで、それほど広くない面積でも、タンクを臨機応変に移動させながら効率よく作業ができるのだそうです。

この柔軟なスタイルが、かつてないほど役立ったのは2018年夏のこと。大阪のデラウェアは記録的な猛暑でグラデーションに色付き、生食用として買い手がなくなってしまった近所の農家さんからの相談が殺到しました。結果、カタシモワイナリーさんで受け入れたぶどうは50トン。これまでにない膨大な量です。

「契約している他県のぶどう農家の分を関東のワイナリーへ回しても、まだまだ大阪産のデラウェアは持ち込まれました。タンクを何度も移動させて、作業スペースを確保できたからこそ、無事にすべて醸造できたんです。そもそもこのワイナリーができたのは、名産品としてたくさん採れることで余りがちなぶどうを、もっともっと活かすため。地域の困難を乗り越えるべく生まれたのです」(高井さん)

「地域貢献、地域密着型」の思想は今も脈々と受け継がれています。


続いて、ワインを熟成させる蔵へ。国の登録有形文化財にもなっているものなんだそうです。

コンクリートの壁と壁の間に仕込まれているのは、なんと竹炭。かつてはその間を井戸水(地下水)が通ることで建物全体を冷やしていました。

本当は、お中元用の生食ぶどうを保管するためのものだったそうです。戦争が始まったことにより、酒石酸を採取した後のワインをブランデーに蒸留するようになり、現在はワインなのどの保管に使用しているそうです。


なくてはならない存在のワイナリー

歴史を感じる蔵を経て、テイスティングルームへ。レトロでおしゃれな空間です。所狭しと並んでいる文化財に驚かされます。これらは当時カタシモワイナリーさんが使用していたワイン造りのための機材です。

ワイナリーの創始者は、高井さんのひいお爺様です。きっかけは、ぶどうの産地であるにも関わらず、強い勢力を持つ台風に頻繁に襲われる堅下地区では、せっかくの良いぶどうがダメになると、村人が困窮してしまうと考えたこと。

そこで、ひいお爺様は「ぶどう酒」に目をつけます。当時からご近所でもハイカラで有名だったといいます。「お酒やったらなんとかなるやろう」と、ワインを造りはじめたのだそう。

その当時、醸造面で手を貸してくださったのが丹波の杜氏さん。リヤカーに醸造で使用する道具を乗せて、100キロの道を運んでくださったのです。様々な試行錯誤を行い、醸造技術は向上しました。

「やっぱりワイナリーって、必要とされなくてはいけないものだし、なくてはならない存在でなくてはいけないですよね。そしてみなさんに喜んでもらわないと。ロマンのある要求には、できるだけ応えるようにしているんですよ」(高井さん)

そして、噂の“たこシャン”を発見! 大阪の「粉もん」代表のたこ焼きソースとだしにあうように作られたというのも納得、ドライでキレのいいスパークリングです。

この一杯のために来たようなものだったけれど、私がもっと気に入ったのは絹の様な繊細な舌触りが特徴のメルロー「合名山」やカタシモワイナリーさんが歴史と伝統を誇るジャパニーズグラッパをさらに飲みやすくした「大阪ど根性スピリット」。魅力的なラインナップの数々に圧倒されてしまいます!


幼い頃は、ご自身がワイナリーを継ぐことを考えたくなかったという高井さん。しかし東京で仕事をしてゆく中で、このままぶどう畑に関わることなく人生を送るのかどうかを考え抜き、やがてはご実家へ戻ることを決意されました。

「ご先祖さまの積み重ねてきた石段の上のぶどうの樹が、今の自分の生活を支えてくれている。そのことを再確認したとき、謙虚な気持ちになりました。人として、誠実に生きたいと強く感じたのです」

カタシモワイナリーさんのワインから感じる「真摯さ」は、高井さんのこの思いから発しているものだと感じます。

高井さんの弾ける笑顔に魅了され、笑いの絶えなかったカタシモワイナリーツアー。ワイナリー見学は月ごとに回数が決まっており、要予約制です。特製ランチボックスとワインも付いて3,500円と太っ腹。ワイナリーの周辺には、史跡などの見所もたくさんありますよ。


<ryokoポイント:まとめ>

カタシモワイナリーで、見どころたっぷりのツアーに出かけよう!


カタシモワイナリー

http://www.kashiwara-wine.com/

住所:大阪府柏原市太平寺2-9-14

営業時間: 10:00〜17:00(平日のみ)

電話:072-971-6334

<直売所>

住所:柏原市太平寺2-7-33

営業時間:平日10:00〜18:00 土日祝10:00-17:00

電話:072-972-0208

定休日:年中無休(正月休み除く)

見学:ワイナリーツアーあり(要予約・有料)


【りょーこ プロフィール】

Vinetree株式会社 

メディア担当

1990年生まれ・千葉県出身。食べ物、お酒をこよなく愛する。最初は海外のデイリーワインから始まり、まもなく日本ワインのとりこに。家飲みでは飽き足らず飲み歩く日々。最初から最後までハッピーな気分で飲みきれるワイン、悲しいことがあった時に付き合ってくれるワインたちが大好きです!

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