モノづくりの喜びを可愛いボトルに詰め込んで(前編)

まだまだ知らないことばかりだけれど、日本ワインをもっと知りたい!と意欲満々のワタシ、ヴァインツリー編集部員・りょーこが、ワイナリーを訪ねて感じたあれこれをお伝えします。こんなことを聞いたら怒られるかも…なんて、ちょっとおっかなびっくりのレポートですが、同じように日本ワインをもっと知りたい! というみなさん、どうぞご一緒に。


episode 8_1

モノづくりの喜びを可愛いボトルに詰め込んで(前編)

可愛らしいボトルの中身は一体どうなってるの?

通りかかる人たちが「こんな所にワイナリー?」と驚くのが、御徒町の街中に醸造所を構える「BookRoad〜葡蔵人〜(以下、ブックロード)」。

ガラス越しに、大きなステンレスタンクが見えています。エントランスは、脇道にそれたところにひっそりとありました。そばには、看板と可愛らしいワインボトル。インターホンを押すと、笑顔がチャーミングな醸造責任者・須合(すごう)美智子さんが迎えてくれました。さっそく1階の醸造施設内でワイナリー訪問開始です!


醸造家になったきっかけは「面白そうだったから!」

施設内にはステンタンクが整然と並び、清潔な印象。このタンクと圧搾機で、契約農家さんから買い付けたブドウを圧搾・醸造しているとのこと。ここでつくられたワインは2階に運ばれ、ボトルに充填・打栓されます。

「一回作業を始めると、途中で止められないんです。SNSを更新する余裕もないくらい」と須合さん。重労働だと言いつつも、その笑顔はとても穏やか。

もともとは飲食店でパート従業員として働いていた折、社内でワイナリー事業立ち上げの話が持ち上がりました。醸造家の公募があり、自ら立候補したんだとか。

なぜ、醸造家になろうと?

「お酒を飲む機会はあっても、つくる機会にはなかなか出会えません。もともとモノづくりに興味はもっていて、ワインづくりもモノづくりだなと。それに、なんだか面白そうだなって」と須合さん。

2016年より山梨県の「マルサン葡萄酒」で約1年間の研修を経験。今までやっていた家事も気になり、毎日我が家にはちゃんと帰りたい。そう考えて、都内から山梨県まで車で通いました。穏やかな語り口とは裏腹に、溢れだす情熱を止められない…。

ワイナリーの醸造施設を作る際は、空きビルだった建物を自分たちでリノベーション。汚れが落ちやすい塗料で壁を塗るなど、クリーンに保つ工夫も随所に凝らしました。施設としては小規模ですが、1度に運ばれてくるブドウは、山梨、長野からおよそ2トン。醸造施設内はブドウでいっぱいになり、足の踏み場もなくなります。

そこで、醸造機器にキャスターをつけて移動可能にして、限られたスペースを最大限に活用。醸造の最中に機械を動かせるのは大きな利点だといいます。醸造のシーズンだけではなく、オフシーズンの施設内の修繕やクリーンアップにも役立っているんだとか。

モノづくりといえば、BookRoadがある御徒町から蔵前へと続くエリアは「カチクラ」と呼ばれ、古くからモノづくりが盛んな街です。このワイナリーも「つくることを楽しむ」たに、ブドウ栽培から醸造まで全力で行うのがコンセプト。この場所にあることは必然だったのかもしれません。


“母”を感じるワインづくり

「ワインづくりで面白いのは、ブドウがワインへ変化するタイミングに立ち会えること」だと須合さんは言います。確かにこれは醸造家の特権。日々の小さな成長を楽しみながらワインづくりに向き合うのは、まるで我が子を育てる“お母さん”のよう。「確かにそうかもしれません」と須合さんもうなずきます。

「山梨、長野といった場所で契約農家さんに管理をお願いしているブドウは、遠く離れた子供のようで…。現地までスタッフと毎日ブドウ畑に行くのはやはり難しいもの。仕込みの時期に運んで来られたブドウを見て、こんな風に大きくなったのね! と確認して、醸造します。特に難しいことはしません。真面目に、正直にやるだけです」

帰ってきた「子どもたち」。その将来設計を最後にしてあげるのが須合さんの役目。大きな愛情を持って真摯にブドウと向き合う姿は、下町の優しく強い母のようでした。

次回は、3階のテイスティングルームにお邪魔します!



BookRoad〜葡蔵人〜

http://bookroad.tokyo/

住所:東京都台東区台東3−40−2

電話:03–5846−8660

ワイナリー定休日:不定休 

ショップ営業時間:11:00~17:00

見学:事前にご予約のお連絡をお願いしております。


【りょーこ プロフィール】

Vinetree株式会社 

メディア担当

1990年生まれ・千葉県出身。食べ物、お酒をこよなく愛する。最初は海外のデイリーワインから始まり、まもなく日本ワインのとりこに。家飲みでは飽き足らず飲み歩く日々。最初から最後までハッピーな気分で飲みきれるワイン、悲しいことがあった時に付き合ってくれるワインたちが大好きです!