日本のロマネ・コンティ!?
酒米の王様「山田錦」の魅力を「龍力(たつりき)」を醸す本田商店を通して知ろう!
数ある酒米の品種のなかでも王様と呼ばれる品種「山田錦」の田んぼ。
お米とブドウでどう違う?
ワインと日本酒の比較をするときによく出てくるお話があります。『何がお酒の味と香りを決めるのか』。ワインは原料であるブドウの品種の違い、そしてその年の出来によって大きく変わりますよね?もちろんどんな製法で造っていくかという醸造家さんの技術も関係すると思いますが、味と香りの決め手としてはだいたい8割方が原料、残りの2割が製法、と言われます。
じゃあ日本酒の場合どうなのか?数字が逆になるんです。8割が製法(どんな仕込み方をするか、どんな酵母を使うか)、2割が原料。8:2が逆。このお話は日本酒のビギナー向けセミナーとかで蔵元さんもよくされています。ワインと日本酒は似て非なるものです、というお話。
実際お米の品種違いのテイスティングはワインのブドウの品種違いのテイスティングより圧倒的に難しく、日本酒を造っている職人さんですら銘柄を隠されたお酒を飲んで酒米の品種を当てるのは至難の業と言われています。きき酒師の僕ももちろん自信はないです。難しいのよ!
「え?じゃあ、お米はそんなにこだわらなくてもいいの?」という声が聞こえてきます。
うん、だめなこともないですが…あの…でも…いや、やっぱりこだわらないとだめ!!というのが僕の気持ちです。8:2の2の部分に秘められた深さが米の酒、日本酒の面白いところ!
コシヒカリなど食べておいしいお米(食用米)でもかなりおいしい日本酒は仕込めますが、お酒造りに適した酒米(正確には酒造好適米といいます)で仕込んだ日本酒の魅力をぜひ知っていただきたいんです。
ちょっとだけ酒造好適米の特徴の説明を。大粒で、心白(米の中心にある白濁した部分)があるのが大きな特徴です。心白があることで日本酒の味に大きな影響を及ぼす米麹造りに向いていますし、たんぱく質や脂質が少ないことも酒造りにふさわしいんです(多いと雑味の多い日本酒になる)。酒造好適米は食用米とは性質が逆!ぐらいで覚えていただけるといいと思います。
酒造好適米の成分構成
酒米の王様『山田錦』にこだわる播磨の地酒 『龍力』を醸す本田商店
さて、2019年現在、酒米の品種は何種類くらいあるかご存知でしょうか?
…約100種類あると言われています。僕も全部は覚えていません!
その中でも抜群の知名度を誇り、作付面積も1位、大吟醸造りには欠かせないと言われる酒米の王様が兵庫県の播磨地区が原産の「山田錦」なんです。
この「山田錦」を語る上で欠かせないのが兵庫県姫路市で「龍力」を醸す「本田商店」さん。播磨の酒蔵として山田錦の農家さんと共に数十年に渡り山田錦の研究を続け、日本酒ファンからも「山田錦といえば?」で名前が挙がる酒蔵さん。
本田商店さんがある姫路市は僕の地元ということもあり、帰省のたびによく蔵に寄らせてもらっては色々と勉強させてもらっています!5代目蔵元の本田龍祐さんの山田錦話を聞きながらお好み焼きをつまみに飲む龍力、うんまいですよ~。あと、たまたまはっぴの色も似てますんでトリオみたいな写真になってます(笑)。
2018年10月にコンビで蔵見学へお邪魔したときの写真。中央が「龍力」を醸す本田商店5代目蔵元、本田龍祐(ほんだ りゅうすけ)さん
さて、日本酒の話をする中ではアルコール発酵の主役「酵母」の話がよく出てきます。どんな酵母を使うかによって日本酒の「香り」がほぼ決定するからであって、酵母の種類や製法の話が中心になることもしばしば。これはワインのテロワールを大切にする世界観とは違うポイントですね。
しかし!龍祐さんはこうおっしゃいます。
「酵母は確かに香りをはじめ、どんな日本酒になるかの方向付けは決めるよ。それは車でいうとドライバーの役割で、そのドライバーの能力を発揮させる優秀なエンジンが山田錦やねん」
なるほど。エンジンの性能次第でドライバーのタイムにも大きく影響しますもんね!
「刺身って結局醤油の味で食べるけど、刺身そのものの良さがあるとよりうまいのは当たり前やろ?その刺身そのものが山田錦の役割やねん。酵母の話ばっかりする人見てたら、刺身いらんの?って思ってまうねん」
なるほどー!!醤油がいくら高級でも刺身そのものがよくないと台無しですもんね!!
ということで米の品種違いは日本酒の香りや味を決める決定打にはならずとも、酵母選びや製法とは一心同体なんですよ!!
ワインにおけるブドウの存在は分かりやすく看板娘!みたいな感じだと思いますが、日本酒におけるお米の存在は縁の下の力持ち!この感じ、日本的ですごく好きなんです。
龍力が実現する『日本のロマネ・コンティ』。テロワールを語りだした日本酒の世界
日本酒の世界では新潟の酒蔵さんも大吟醸を造るときは兵庫県産の山田錦を使ったりと、造り手さんが造りたいお酒のために全国の酒米を選べるのも面白さの1つですが(だから造り手さんにフィーチャーした日本酒特集雑誌なども多い)、海外へ日本酒がどんどん輸出されていく中で、これがネックになることがあるそうです。
「なぜ新潟の酒蔵なのに兵庫県のお米でお酒を造ってるんだい?」
酒蔵さんが海外の試飲会などで現地の方によーく聞かれることだそうです。ワインをよく飲む国の方からすると土地を語ることができないお酒は理解しにくいんですね。
こういった流れの中で、日本酒の酒蔵さんも「テロワール」として語れる「地酒」を醸そう!という酒蔵さんがこの10年から20年、着実に増えています。若い蔵元さんもそういう考えの方が増えているんじゃないかと思います。
地元産の水は当然ながら、仕込みに使う水と同水脈で育てられた地元産のお米、そして地元出身の職人で酒造りをし、地元の人にも世界の人にも誇れるものにしよう!と。
日本酒の世界にある「地酒」という言葉とワインの世界の「テロワール」という言葉の意味が近づいてきてるんじゃないかと思います。
その先駆者的な酒蔵さんの1つが播磨の山田錦にこだわり抜く本田商店さんであって、山田錦へこだわる中で、「日本のロマネ・コンティをつくろう!」と兵庫県産の山田錦の中でもスペシャルな田んぼを探し続け到達し、完成した純米大吟醸酒が「龍力 米のささやき 秋津」です。「秋津」というのが兵庫県加東市にある地区の名前なんですね。
このお酒は「純米大吟醸ってこういうことなのねー!!」と納得の日本酒。播磨に生まれ、姫路で育ったことが誇りに思えるお酒です。大吟醸らしい華やかな香りもあり、なめらかで軽快な飲み口なのにボリューム感のある旨味も感じられ、後味はすっきりキレがいい…「うまい」でしかない。一升瓶で3万円(本体価格)するのでめったに僕も飲めませんが。
日本酒の品質や美味しさが世界に誇れるお酒であることは間違いないと思いますが、さらに世界の吞兵衛に訴える力を持つためには「地酒」と「テロワール」の意味が近づいている今の日本酒界の流れは大きな後押しになるんじゃないでしょうか!
僕たちきき酒師の漫才師「にほんしゅ」も世界で認められるよう頑張ります!
熱くなってきたので「龍力」飲んでクールダウンします。皆さんもぜひ「龍力」を飲んで、播磨、山田錦を感じてみてください。日本酒界のテロワールは着々と広がってます。
本田商店に行くなら近くのこちらも!
神戸ワイナリー姫路から神戸へ回って兵庫の酒と食を堪能するコースはいかがでしょう。
六甲山麓を望む「甲子園球場8個分」(関西らしい)という広大な場所。土地と気候を生かしたワイン造りに触れることができます。神戸から車で30分という場所でありながら自然を感じられるワイナリーです。見学の後のお楽しみは、施設内のカフェ。神戸・北野の人気ビストロのキッシュなど神戸の名店の料理を楽しめるなど食も充実しています。
プロフィール
北井一彰(写真向かって右。左はコンビの相方あさやん):コンビ揃って日本酒のきき酒師の資格を持つ世界で唯一のきき酒師の漫才師「にほんしゅ」のツッコミ担当。きき酒師の上位資格「日本酒学講師」の資格も持ち、お酒の知識を活かしたSAKE漫才、お酒イベントMC、メディア出演、日本酒講座講師、日本酒ライターとして日本のお酒の魅力を楽しく伝える伝道師を目指し、幅広く活動中。
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