みなさんこんにちは!日本酒のきき酒師の漫才師の「にほんしゅ」の北井一彰です。
今月も「ワインにご縁のある日本酒」をテーマにご紹介していきますよ!
ワイン好きに知って欲しい、有名酒米4種!
酒米の元祖と言われる「雄町(おまち)」の田んぼ
(2016年9月にコンビの相方あさやんと見学へ行きました)
日本酒飲みたーい!!みなさん、日本産の美味しいお酒飲んでますか?ありがたいことに僕は日々飲んでおります!日本酒は『米』の酒!ということで前回は酒米の王様「山田錦」について兵庫県姫路市の日本酒「龍力」の魅力を通して書かせていただきましたが、今回は山田錦を含め知って欲しい4大酒米のキャラクターの違いやストーリーを紹介致します!
有名酒米のキャラクター
早速4大酒米の紹介に行きたいところなんですが、予備知識としてワインにおけるブドウと、日本酒におけるお米について、簡単に違いを説明させていただきますね!
ワインを飲むときは原料であるブドウの品種違いというのは味わいや香りを決める、かなり決定的な要素を持っていると思いますが、日本酒を飲むときは原料である酒米の品種違いはそこまで決定的な要素にはならないと言われます。
ここ、大事なんです!ワイン好きの方が日本酒にもハマりだしてすぐの時にちょっとつまずくポイントかなと思います。
酒米はアルコール発酵をしてくれる微生物『酵母』の力を引き出してくれる縁の下の力持ち的な存在。どんな日本酒になるかの方向付け(特に香り)を決めるのが酵母で、その酵母の実力を発揮させるのが酒米の良し悪し、ということを知っておくと日本酒が理解しやすいと思います。もちろん酒米の品質はめっちゃくちゃ大事!だけど、銘柄を知らされず日本酒を飲んで酒米を当てるのは造り手さんでも難しいんですよ。
それでも「ワインのブドウ品種違いみたいなテイスティングも楽しみたいのよ!」という方がいらっしゃいましたら、同じ酒蔵のお酒で、しかも同じ純米吟醸酒の仕込みで、酵母も一緒で、酒米の品種だけ違う!というようなお酒でテイスティングをしていただくと違いがわかりやすいと思います。
酒米との距離感はつかめましたか?
それでは!4大酒米の紹介へまいります。
①酒米の王様!「山田錦」
兵庫県原産。
日本酒を普段飲まない人でも「山田錦」の名前は聞いたことがあるんじゃないでしょうか?演歌に興味ない人でも氷川きよしさんだけは知っている、みたいな、酒米界での絶対的知名度を誇ります。
酒米の品種はおよそ100種類もあると言われていますが、作付面積1位が山田錦。名実ともに酒米界の顔と言えるでしょう。
お米をたくさん削り、雑味なくきれいな味わいと華やかな香りがある大吟醸酒造りに欠かせない酒米と言われます。造り手さんが意図した通りに仕上がってくれる優秀さ。
味わいの傾向はふくよかで柔らかながら、きれいな味わいになりやすいと言われています。パワーがすごいのにスピードもある…え、テクニックもあるの!?大阪なおみちゃんみたい!本当に欠点が無いと言えるんじゃないでしょうか。
まさに酒米の王様です!
山田錦の産地である兵庫県の加東市には酒蔵ののぼりが立っている
◎山田錦のおススメ日本酒一例→「獺祭」純米大吟醸50、「龍力」特別純米 黒ひげなど
②東の横綱!「五百万石(ごひゃくまんごく)」
新潟県原産。
山田錦が王様??酒どころ新潟の酒米も黙ってないぜ!!
2001年に山田錦に抜かれるまで作付面積1位だったのが新潟県原産の「五百万石」です。酒米を語るときの圧倒的な2強が山田錦と五百万石。
西の横綱「山田錦」、東の横綱「五百万石」。この2品種で100品種あるといわれる酒米の総作付面積の60%を占めるといわれるんです。古き良き時代の巨人・阪神のような存在です。
大吟醸酒には不向きですが、米麹が造りやすいと言われ、東日本を中心に全国で栽培される人気酒米です。
味わいの傾向は軽快で淡麗になりやすいと言われます。派手さが売りではないけれど安定してぶれない試合展開を見せてくれる「錦織圭」くんのような酒米です!
…味わいの傾向はテニスプレーヤーで例えていくと決めました!
◎五百万石のおススメ日本酒1例→「鶴齢」特別純米 五百万石 完熟
③寒さに強い!「美山錦(みやまにしき)」
長野県原産。
西の横綱「山田錦」、東の横綱「五百万石」、寒さに強い「美山錦」!
こう覚えていただくといいと思います!美山錦は長野県生まれで寒さに強い品種なので東北でもよく栽培されています。
ここまでの3品種が生産量では他品種を大きく突き放していて、日本酒のボトルを注意して見ていると書いてあることも多いと思います。
味わいの傾向はなめらかでさっぱりとキレのいいお酒になりやすいといわれます。僕個人的なイメージで言うと「クールビューティー」な味になりやすい!
「伊達公子」さんのような酒米です!
なんとか例えも行けそうや!
◎美山錦のおススメ日本酒1例→「信州亀齢」純米吟醸 無濾過生原酒 美山錦
④最古の酒米!「雄町(おまち)」
岡山県原産。
日本酒のお米をロマンチックに語りたいなら雄町は外せません。「雄町」とボトルに書いてあるとなんだか気になってしまいます。独特の滋味深い魅力があるんです。100年以上途切れずに栽培されている唯一の品種で「最古の酒米」と言われます。
現在普及している酒米の約3分の2はこの雄町が先祖だと言われています。山田錦も雄町の子孫なんですよ。
最古の品種というとロマンがあっていいんですが、古い品種というのは「改良されていない」ということでもあるんです。雄町は背もすごく高く、見た目もぼっさぼさ。野性味があふれてるんです。170㎝くらいまで育つんですよ?そんな稲見たことありますか?
雄町以降、育てやすく優秀な酒米の品種が出てくる中、育てるのが大変な雄町は絶滅の危機に瀕しました。しかし!雄町の原産地である岡山県の酒蔵さんが立ち上がり、農家さんと共に「岡山から雄町を消してどうする!」と奮闘し、現在では他の酒米には無い「不器用ながらも愛すべき魅力満点!」な雄町に日本酒の造り手も飲み手もファンが年々増加しています。
味わいの傾向は濃醇な甘みや旨味があり、味わいの幅があるフルボディな酒質になりやすいと言われています。
雄町の稲は本当に力強い!
まさに!日本テニスのパイオニア、全米シングルスベスト4まで進出した!明治生まれの「熊谷一弥」さんのような酒米です!
。。。ちょっと例えを攻めすぎました!雄町は「松岡修造」さんのような酒米です!実力もさることながら、豊かな人間性で周りを魅了する!放っておけない存在なんです。
ということで生産量やロマン、知名度などからまず知っていただきたい4大酒米の紹介をさせていただきました。
品種の違いがダイレクトに香味の傾向に出にくい、というのがなんだか僕には日本らしく感じて酒米への興味をより引き立ててくれます。酒蔵さんが思いを込めて復活させた酒米などまだまだ紹介したい酒米もいっぱいです!
酒米は日本の魂であり、ロマン!
全米制覇(全国の酒米の魅力を知り尽くすこと)を目指します!
酒米の四天王を紹介いただきました!ではワインのブドウ品種でいうと四天王はなんでしょう?質量、名実、偉大なワインを生み出してきた、というような視点で行くと、シャルドネ(白)、カベルネ・ソーヴィニヨン(赤)、メルロ(赤)、ピノ・ノワール(赤)ということになりそうです。
では、日本の国産品種では? 現状では、交際品種としても認められた甲州(白)とマスカットベーリーA(赤)の2種類がトップ2で、あとはまだまだこれからの可能性を楽しみにといったところでしょうか。酒米のように、世界のファンに向けてもこれぞ日本のワインのためのぶどうというものが出てくるとよいですね。
プロフィール
北井一彰(写真向かって右。左はコンビの相方あさやん):コンビ揃って日本酒のきき酒師の資格を持つ世界で唯一のきき酒師の漫才師「にほんしゅ」のツッコミ担当。きき酒師の上位資格「日本酒学講師」の資格も持ち、お酒の知識を活かしたSAKE漫才、お酒イベントMC、メディア出演、日本酒講座講師、日本酒ライターとして日本のお酒の魅力を楽しく伝える伝道師を目指し、幅広く活動中。
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