そのワインは京都の食と文化とともに(前編)

まだまだ知らないことばかりだけれど、日本ワインをもっと知りたい!と意欲満々のワタシ、ヴァインツリー編集部員・りょーこが、ワイナリーを訪ねて感じたあれこれをお伝えします。こんなことを聞いたら怒られるかも…なんて、ちょっとおっかなびっくりのレポートですが、同じように日本ワインをもっと知りたい! というみなさん、どうぞご一緒に。


episode 7_1
丹波ワイン「そのワインは京都の食と文化とともに」(前編)

驚きと感動の丹波ワインを訪ねて

JR山陰線園部駅から車でおよそ30分。山々に囲まれた美しいぶどう畑にやってきました。京都といえば寺社仏閣をはじめとした歴史ある観光名所が思い浮かびますが…ここは黒豆で有名な丹波町。京都にもこんな一面があったのか、と。

ワイナリーではさらなるビックリ&楽しいツアーが待ち受けていました。


第4のビール!? てぐみのパフォーマンスに酔いしれる

到着してまずはワイナリーに併設されたレストラン「du tamba」でランチをいただきました。このレストランは大きな窓からぶどう畑が見えるようになっており「きっとぶどうの季節は借景が見事だろう」と想像してしまいます。

ところどころに置かれたワインボトルやワイン樽の装飾も本当にオシャレ。運ばれてくるお料理は地元産の新鮮な食材をふんだんに使用し、丹波ワインとよく合うお料理ばかり。

ここで、料理長・木戸さんから嬉しい豆知識をいただきました。丹波ワインのワインボトルには1本1本にナンバリングがされていて、もし記念日やお誕生日と同じナンバーのワインが直営店にあれば、レストランで「記念日ワイン」としてサーブしてくれるのだとか。

そして本日最初に提供されたのはスパークリングワインの「てぐみ」。ここまで表情を変えるスパークリングワインには出会ったことがなくて驚きました。最初はグラスいっぱいに桃を思わせる香りが広がり、口に含むとスキッとしたぶどうの果実が感じられます。

口当たりの良い辛口の泡は、お料理の個性を引き出してくれました。ところが、少し時間が経つとまるでもっちりとしたパンのような香り。今度は食に寄り添う側面が出てきたような…あれ、これビールの感覚にそっくり!

「ビールの代わりに楽しめるようにと考えて造られたスパークリングなんです。最初の飲み口から瓶底までの楽しみを感じていただける造りとなっています」と、にっこり微笑む木戸さん。

微発泡と記載がありますが、体の奥底に届く泡は、まさにビールそのものです。これは「第4のビール」? だから「てぐみ」は、日本ワインをよくご存知の方が一番驚かれるとのこと。こんな表現方法を持つ日本ワイン、確かに驚いてしまいますね。


繊細な調味料としてのワイン

ランチをいただいていよいよお待ちかね、ワイナリーツアーに出発です。最初に案内されたのはぶどう畑。この日はお天気がクルクル変わり、不思議な場所だなと感じました。

1979年創業の丹波ワインは、本日の水先案内人・黒井衛さんのお父様が設立されました。お父様は食べることとお酒がお好きな方で、お仕事でよく海外に行かれたそう。その時にワインと出会ったと言います。

そこでお父様が感じたのはワインそのものというより、言葉や匂いなどを含めたその土地の食文化でした。そんな経験から、普段自分たちが食べているものに合わせたワインを作りたいという強い気持ちが生まれ、丹波の地で丹波の食に合ったワインを作ろうとしたのですね。

そんな丹波ワインのぶどう畑で栽培されているぶどう品種は、なんと48種類(そのうち商品化されているのは8、9種類だそうです)! 多種が育つ広大な畑ですが、管理しているのは2名。この膨大な品種の中から、一体何の品種が丹波ワインの畑と相性が良いのか、日々検証しているそうです。

草生栽培を主としている畑では、ぶどうの樹の根元に青々とした雑草が生えています。入梅の頃には草刈りをしてそのまま有機栽培用の肥料とするそうです。

現在のぶどう畑はもともと、母体であるクロイ電気の工場増設予定地だったとのこと。ぶどう畑の奥には福利厚生施設として野球のグラウンドがあります。付近の少年野球のチームも練習に来るそう。ステキな光景ですね。地域の皆さんのご協力もあり、ワイナリーとして無事ワインづくりをスタートできたそうです。

しかし、ここは京都。元々日本酒のイメージですよね。やはり日本酒の存在は強く、「なんだ、日本酒を造ってたんじゃないないのね…」とぼやかれるのもしばしばだったとか。すでに日本酒と京料理の関係が密接な京都で、日本酒ではなく日本ワインを根づかせる苦労は並大抵ではなかったはず。

「ワインを売ろうとすると『何しに来はったん?』という感じで。そこで、京料理と親和性の高いワイン、京料理にとっての調味料のように寄り添う存在を目指してワインを造ってきました。それが、ようやく少しずつ認められてきた気がしています」と、当時を振り返る黒井さん。

お酒は食べ物ありきのもの。日本酒の銘地・京都でワインをつくると言う厳しい状況下でも、「ワイン」と言う商品の見方を変え、大変な努力をしながら浸透させてこられたことが伺えます。

後編は、醸造所に潜入しますよ! どうぞお楽しみに♪


ワイナリー名:丹波ワイン株式会社

住所:京都府船井郡京丹波町豊田鳥居野96

電話:0771-82-2003(ショップ)

会社営業時間:10:00〜17:00

ショップ営業時間:10:00~17:00

※毎週木曜日および年末年始は定休

レストラン:完全予約制 金土日祝日 12:00~14:30(ラストオーダー)

見学:無料ツアー土・日・祝日11:30〜/平日11:00〜

http://www.tambawine.co.jp/


【りょーこ プロフィール】

Vinetree株式会社 

メディア担当

1990年生まれ・千葉県出身。食べ物、お酒をこよなく愛する。最初は海外のデイリーワインから始まり、まもなく日本ワインのとりこに。家飲みでは飽き足らず飲み歩く日々。最初から最後までハッピーな気分で飲みきれるワイン、悲しいことがあった時に付き合ってくれるワインたちが大好きです!

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