にほんしゅくんが行く!vol.4 広島テロワール!復活した酒米『広島錦』と『賀茂鶴酒造』の魅力

みなさんこんにちは!日本酒のきき酒師の漫才師の「にほんしゅ」の北井一彰です。

今月も「ワインにご縁のある日本酒」をテーマにご紹介していきますよ!

前回の記事はこちら>>「ワイン好きに知って欲しい、有名酒米4種!」


広島テロワール!復活した酒米『広島錦』と『賀茂鶴酒造』の魅力

JR西条駅前に広がる美しい景色。歴史ある酒蔵が立ち並ぶ。

(写真提供:賀茂鶴酒造株式会社)


酒米にはロマンがある!地酒には魅力がある!酒米『広島錦』を知ると広島に行きたくなる!

皆さんこんにちは!日本のお酒楽しんでますか?日本酒が大好きな僕ですが、日本ワインが好きな皆さんにも日本酒の魅力を知っていただけたら!ということで今日は原料の酒米の中でも「広島錦」という近年復活したばかりの品種を知ると共に、広島錦を復活させた賀茂鶴酒造さんや、広島の西条の魅力を知っていただきたいと思います。日本酒の世界にもテロワールの考え方が広がっています。


酒の都!?西条

今回紹介をさせていただく賀茂鶴酒造さんがある広島県東広島市の西条がどんな所なのかをまずはご紹介!

西条とは、、、

日本酒大手メーカーがひしめく兵庫の「灘」、京都の「伏見」と並んで日本三大酒処と呼ばれ、酒の都と書いて「酒都・西条」とも呼ばれる泣く子も黙る、親父は喜ぶ全国でも最強クラスの日本酒シティなんです!

現在でもJR西条駅前に酒蔵さんが7蔵も密集しており、その景観の美しさは圧巻!!広島へ旅行に行ったら「立ち寄る」の一択しか無いです!見学・利き酒スポットも数多いです。広島県の南部寄りに位置しますが盆地のため冬は冷え込み、日本酒造りにはぴったりの土地なんです。丁寧に精米されたお米を西条の軟水でゆっくり時間をかけて仕込む「軟水醸造法」が明治時代に確立されて以降、一大産地として名を馳せています!

また東広島市には、日本で唯一の酒類の国立研究所「酒類総合研究所」もあります。


そんな西条のお酒をこれでもか!!と楽しめるイベントがあるんです。毎年10月に開催される「酒まつり」なんと20万人以上が来場するお化けイベント。世界最大の日本酒イベントです!光栄なことにきき酒師の漫才師「にほんしゅ」もステージへ出演させていただいたことがあるんですが、僕たちの1個前の出番の方が「クリス・ハート」さんという、、あれは緊張した、、お酒もステージもすごいイベントです!ぜひ「酒まつり」もチェックしてくださいね!

酒まつりの一コマ。担いでいるのは杉玉

(日本酒の蔵に新酒が出来た合図で吊るされる杉の葉で出来た玉)!


広島地酒の雄!!西条らしい柔らかな味わいの『賀茂鶴』を醸す賀茂鶴酒造のこだわり

「広島錦」のお酒を仕込んだ賀茂鶴酒造2号蔵杜氏の椋田茂(むくだ・しげる)さん

(写真中央。写真左が「にほんしゅ」あさやん、写真右が「にほんしゅ」北井)。イケメンの頼れる兄貴!


お次に「賀茂鶴酒造」ってどんな酒蔵?というお話を。

広島県の日本酒はフレッシュなもの、ジューシーなものなど現在多彩な味わいがありますが、軟水で仕込んだ柔らかで飲み飽きしない西条らしいお酒であればオススメするのが「賀茂鶴」です。

2014年に安倍首相と当時のアメリカ大統領オバマさんが銀座の高級すし店「すきやばし次郎」で会食したときに飲まれたお酒が「ゴールド賀茂鶴」という賀茂鶴酒造さんの大吟醸酒。おだやかな香りと優しい甘みと旨味で、お寿司屋さんで和のおつまみやお寿司を会話とともに楽しむお酒、というときにうってつけです。主張しすぎず、調和のとれた味わいは、最高級のお寿司にも寄り添う、正に和のお酒です。

そんなお酒は原料にもこだわりがあります。お酒の口当たり(お酒の骨格)を決める仕込み水賀茂山系伏流水(軟水)です。そして使うお米は広島県産の酒米酒造好適米100%

広島県は、酒米の元祖「雄町(おまち)」の産地岡山県や酒米の王様「山田錦」が有名な兵庫県と並んで素晴らしい酒米産地なんですね。そして広島の酒造りの技術「軟水醸造法」「吟醸造り」という手間暇かかる製法を守りつつも進化させてきた「広島杜氏」の手によって仕込まれます。

そんな「賀茂鶴」は香りおだやか、やさしい甘みと旨味が疲れを癒してくれて、なんだか日頃の悩みを打ち明けたくなるようなお酒。こっちが愚痴っても嫌な顔ひとつせず「そりゃああんた大変やったねぇ、まぁまぁ飲みんさいねぇやぁ!」と延々と付き合ってくれる、そんなお酒。牡蠣バターやお好み焼きとも相性抜群です!


賀茂鶴酒造さんの想いを詰め込んだお酒『広島錦』

復活した広島錦は古い品種の酒米。古い品種は背が高くて育成が難しいといわれる。


そんな広島地酒、西条の酒であることを大切にする賀茂鶴さんの注目すべきお酒といえばこれ!「広島錦」

広島錦は純米酒と純米大吟醸の2種類のラインナップ

(写真提供:賀茂鶴酒造株式会社)


「広島錦」というのがお酒の名前であって、酒米の名前でもあるんですね。その名の通り広島で生まれた酒米で、およそ100年前に誕生してから広島の酒造りを支えてきた酒米でしたが、栽培の難しさなどから残念ながら姿を消していきました。

しかし、広島地酒であることを常に大切にされる賀茂鶴酒造さんの手によってわずかな種もみから再度栽培がスタートし、6年の歳月をかけて収穫量も増え遂に2017年に商品化

使用する酵母も賀茂鶴がオリジナルの「協会5号酵母」。広島産にこだわった、まさに広島のお酒です。

僕も何度も飲ませていただきましたが、とにかくもう「優しい」味わい。風邪をひいたときに一番そばにいて欲しい。そんなお酒。

口当たりの優しさは軟水仕込みの「賀茂鶴」の味わいそのものなんですが、そのあとに口にふくらむ滋味深い旨味はなんともいえぬ安心感を与えてくれます。広島錦よりも古い品種で酒米の元祖とも言われる「雄町(おまち)」のお酒を飲んだ時も似たようなあたたかい滋味深さを感じることがありますが、広島錦のほうがよりソフトな印象を持っています。

「広島錦」は純米酒と純米大吟醸酒の2種類あるんですが、純米大吟醸酒はより上品で甘みがあって、「これ、ケーキとかにも合うんちゃう?」とモンブランと合わせてみたらシャレにならないマッチング度合い!!「2回目のデートで結婚を決めちゃうんじゃない!?この2人!!」というくらい合いました。「広島錦」の純米大吟醸とモンブラン。みなさんもぜひ合わせてみてくださーい!

「純米酒 広島錦」は料飲店限定ですので、お店でしか飲めません。見かけたときはぜひにもご指名を。底力のある旨味たっぷりのお酒です。

まだまだこのお酒に関しても伝えたいことはあるんですが、賀茂鶴酒造さんや広島錦を通して広島・西条の風土や魅力を少しは感じていただけましたでしょうか?

酒米にはドラマがある、歴史がある、そして、、未来がある!日本酒飲んで日本の酒文化をこれからも伝えていくぞー!!おー!!!、、、、熱くなったので「賀茂鶴」飲んでリラックスしたいと思います。ありがとうございました。


ワインのブドウ品種にも、広島錦のように、その地に古くからったにもかかわらず、育成の仕方が難しかったり、国際的なマーケットにのらなかったなどの理由で、いつの間にか忘れられてしまったものが数々あります。例えばチリのパイス。もともとは、チリで人気のある品種でしたが、いつしか時流に乗り遅れたブドウとして廃れていきました。それが現在では大手も注目。世界的な評価を受けるスパークリングワインなどから火が付き、もともとの特徴を生かしながらも、モダンなスタイル、上質な造りで人気がじわじわと高まっています。

もちろん一度忘れさられたということは生育や栽培、ワイン造りにおいて困難なこともあります。ただそれを乗り越えるだけの意味と素晴らしさがあるのでしょう。サッカー界のスーパースターであるイニエスタのワイナリーがプライドを持って育てるスペインのボバル、オレンジワインで注目されるジョージアの固有品種など、その土地に元々あったものを生かす動きは世界各地で行われています。ぜひ味わってみてください。


賀茂鶴酒造株式会社HP

https://www.kamotsuru.jp/


プロフィール
北井一彰(写真向かって右。左はコンビの相方あさやん):コンビ揃って日本酒のきき酒師の資格を持つ世界で唯一のきき酒師の漫才師「にほんしゅ」のツッコミ担当。きき酒師の上位資格「日本酒学講師」の資格も持ち、お酒の知識を活かしたSAKE漫才、お酒イベントMC、メディア出演、日本酒講座講師、日本酒ライターとして日本のお酒の魅力を楽しく伝える伝道師を目指し、幅広く活動中。

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