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長く静かに懐かしい余韻。この土地の明日に思いを馳せて
フェルミエ ケルナー 2017
「ルサンク シャルドネ」のレビューで紹介した「新潟ワインコースト」。新潟市街地の南西部、車で30分ほどの日本海を望む、海と砂に囲まれた場所に集まった個性的なワイナリー。「フェルミエ」もそのひとつです。設立は2006年。フェルミエを開いたワインメイカーの本多さんは、いわゆる脱サラ組。しかも、筑波大から旧日本興業銀行に入行。その後みずほ証券と大手金融を歩んできたというキャリア。新潟出身ではありますが、東京でのキャリアを捨てての挑戦。その挑戦の場が故郷でした。
ここで紹介するワイン、ブドウ品種ケルナーは、実はこの地のものではなく北海道・余市産。しかし、本多さんが目指すスタイルである「エレガントな香りのアタックと長い余韻、繊細で優しい味付きながらも旨味に溢れ目が詰まっている」が良く表現されています。このスタイルはこの地の土壌から導き出されたものですが、不思議にこのケルナーはそのスタイルで仕上がっています。
朝の太陽の下、黄色い柑橘たちが静かにやさしく「おはようございます」と言っているようなアロマ。それから中間や飲み口には懐かしいミカンの酸味、袋の白い筋を思わせるほわほわとした優しさから、長い余韻。30秒、1分、1分半…経過とともに何か昔の初夏に連れていかれる嬉しい錯覚。瑞々しい水菜と白身や青魚のカルパッチョ。そんなペアリングも浮かびます。フェルミエさんは多彩なブドウ品種づくりにも挑戦していますが、その中にケルナーもあります。今後、この地で生まれたケルナーにも期待しつつ、この見事なケルナーも愛しい存在です。
VinetreeMAGAZINE編集部
フェルミエ
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